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Nobuhiro Toriba

Nobuhiro Toriba

2023年秋、世界中の人々が集う京都にサタデーズ ニューヨークシティはオープンした。ニューヨークから発信するスタイルとカルチャーを日本の古都で根付かせるには? 京都の歴史と独自性とカフェカルチャーを巧みに融合させる「トリバコーヒー」代表、鳥羽信博さんに話を聞いた。

 

京都だから出会えた場所

  -『トリバコーヒー』は2014年から銀座で親しまれ、 ’23年2月にこの京都店をオープンされました。 初の地方進出を京都にされた理由は?-

 

 

“22年の夏、大丸京都店にビーガンカフェをオープンさせた際に、ほかにも京都で何かをやりたいと考えていました。 しばらくして、ここが空いたタイミングでお話をいただき、 すぐさま内見をして即決したんです。 この佇まいは東京にはないですから。”

 

“以前は119年の歴史を重ねた京菓子の 老舗・京華堂利保さんが戦時中から入られていたそうです。 当初は新たにビーガンレストランを始めようと 物件を探していたのですが、ここを見たときに違うと感じて、やっぱり『トリバコーヒー』かなと”

 

- 元々あった状態を活かして、 できるだけ手を加えずに改装されたそうですね -

 

 “外観や内装、什器も可能な限り活用させていただきました。コーヒー豆を陳列しているガラスカウンターは、 和菓子が並べられていたショーケースです。 その奥の収納棚は京華堂利保さんのさらに前、 呉服店だった約100年前から使われてきた家具で 反物を入れていたと伺いました。 想像するに、こんなにたくさん小さな引き出しがあっても、 和菓子店としては決して使い勝手は良くなかったはず。 それでもほとんど手を加えなかった。”

 

 

 

“僕は大学時にロンドンへ留学していたのですが、 建築はレンガや石造りが多くて築100年・200年が 当たり前。日本人の感覚だと文化財みたいに 捉えるけど、イギリスでは何ら特別な存在ではなく、 そうしたアパートに学生がシェアして住んで、 壁をペンキで塗り替えたり、ちょっとした修繕なら DIYで済ませる。それを当たり前にやるのが 本当の暮らしだと思うんです。

 

一方、日本では、古民家となると外装は 極力ありのままを残そうとするものの、 内装はキレイにリノベーションして ガラリと変える傾向が強い。それも悪くはないけど、 長く深い歴史こそが醍醐味なのに、一掃して新しくしたら 肝心の魅力を味わえなくなってしまう。 だから僕個人は、古いものは古いままが良いと思っています”

 

ロースターが淹れる京番茶

 

-銀座店はカフェではなく、自家焙煎によるコーヒー豆の 専門店でした。ゆえに店頭で提供されていたコーヒーも、 あくまでテイスティングという位置付け。 対して京都店は座席が十分にあり、 軽食も用意されていますね-

 

“京都店を始めるにあたって、 これまでの流れとは関係なく 新しいスタート地点に立ち返りました。 ずっとコーヒー豆を専門にしてきた僕が、 喫茶店を開いたらどうなるか? 言葉に表すのは難しいのですが、 今まで拒んできたことを受け入れたら 何が見えるだろう?って”

 

 

-こちらでは番茶も取り扱われているのがユニークです-

 

“コーヒーショップが別の飲み物を提供するのって、 実は抵抗があるんです。 父親もコーヒーの仕事をしているのですが、 銀座店の準備を進めているときに、 紅茶やジュースはどうするんだ。 コーヒーを飲めないお客様はどうするんだ? と言い出した。僕は取り扱うつもりはなくて、 鮮魚店に肉を買いには行かないでしょ? と返したら大ゲンカになりました(笑)。

父の考えは、コーヒーを飲みたい方も、 紅茶やジュースを飲みたい方も、全員をフォローすべきだと。 だけどロースターである僕には、コーヒーほどの情熱を 紅茶などに注げない。それは自分たちの仕事ではないし、 何より本当に届けたいサービスとは 別のベクトルに向かってしまう。 とはいえ、コーヒーのカフェインを嫌がる方、 アレルギーの方もいらっしゃる。 そうしたお客様には最高のデカフェを焙煎しています。 ただそれでも、やはりコーヒー本来の味わいとはまた違う。 その悩ましさに対するひとつの答えが番茶でした。 ”

 

 

“本物の京番茶を知らない方ですと美味しくないとか煙いと感じる場合もある。僕も初めて飲んだときには、なんじゃこりゃ!?と驚きました。しかし何年も京都へ来ているうち、何の気なしに番茶を注文する自分がいたんです。最初は苦手でも嗜好性が高くて、コーヒーにも通ずるポテンシャルを備えていると気付いた。しかも番茶にはカフェインがほとんど入っていないからデカフェの代わりにもなる。それで京都の茶葉専門店・セブンティプラスの中野賢二さんに相談をしたところ、何十種類もの京番茶を集めてくれました。そこで選んだのは一番クセが強くて、なんじゃこりゃ!?という味の茶葉。ハッキリと特徴がないと魅力は伝わらないと思ったからです。”

 

歴史の舞台を傍らに暮らす

 

-住まいも京都に移されたと伺いました-

 

“以前から頻繁に来ていましたが、実際に生活をすると全然違いますね。考え方や感覚も異なるので、戸惑うこともあります。たとえば祇園のある四条からこの店の二条までは2ブロック、徒歩15分程度です。僕の認識では何となく同じエリアのイメージ。ニューヨークでもタクシーに乗る人はまずいない。それが京都だと祇園の方々が二条まで来ることはあまりない。遠いんですって。さらに鴨川を境にして東と西でも文化が異なる。いずれにしても、今まで暮らしてきた環境とまったく違う。かえって抵抗がなくて意外と馴染みやすく感じています。あとは普段の食事や和菓子を買いに行くお店、お茶屋さんなど、100年・200年・300年と歴史があったり、そのタイムスリップ感は面白いですね。嫌なところもいっぱいありますよ。寒いとか、暑いとか(笑)。ニューヨークやモスクワ、世界中の寒い都市に行きましたが、京都のほうが遥かに冷える。まるでナイフで切り刻まれるように凍てつく寒さです。”

 

Text

- ニューヨークですと SATURDAYS のフラッグシップストアがあります。足を運んでいただいたことは?-

 

もちろん何度も。SATURDAYS とのお付き合いは 代官山に日本1号店をオープンされたとき、 店内のカフェで提供するコーヒー豆を ご依頼いただいたのが最初でした。 2012年だったので、まだ『トリバコーヒー銀座』を 開く前、別の店や卸売をやっていた頃です。 以来、一緒にブレンドを考えたり、SATURDAYS 各店の コーヒー豆を調達から焙煎まで 担当させていただいています。 日本のショップもソーホーのフラッグシップストアに 負けないほど雰囲気が良くて、どこも本当に素敵ですよね。”

 

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